業務システムの形式と市場動向 ~海外拠点に適したシステム形式とは~
企業が業務を円滑に進めるためには、業務システムが不可欠です。業務システムは業務の効率化を支え、重要なデータを管理・分析するための基盤となります。システム形式には製品毎に「クラウド形式」と「オンプレミス形式」の2つがあり、どちらを選択すべきなのかは企業の規模や運用方法によって異なります。特に海外拠点でシステムを導入する場合は、どちらの形式が最適かを理解することが重要です。今回は、これら2つのシステム形式と市場動向を詳しく説明し、海外拠点にどちらが適するのかを考察します。
1. 2つのシステム形式
業務システムには大きく分けて「クラウド形式」と「オンプレミス形式」の2つがあり、それぞれ運用方法や管理方法に大きな違いがあります。製品によっては両方の形式を選択可能なものもありますが、一般的にはどちらかの形式のみの提供です。
クラウド形式
クラウド形式はデータやアプリケーション、システムがインターネットを通じて提供されます。利用者は自分のコンピュータに専用のアプリケーション等をインストールすることなく、一般的なWebブラウザからアクセスして利用する形式です(ここでの「クラウド形式」は、いわゆる「SaaS(Software as a Service)」の形式を想定しています)。
クラウド形式では、システムの管理・運用をサービス提供者が行います。そのため、利用者はインターネットを通じて、そのサービスを利用するのみです。例えば代表的なものに、Google DriveのオンラインストレージやOffice 365のクラウドベースのオフィスアプリケーションが挙げられます。この形式では、アプリケーションを物理的に購入してインストールする必要がなく、インターネット経由で簡単に利用できます。
オンプレミス形式
オンプレミス形式は企業がアプリケーションを購入し、それを自社のサーバーやコンピュータで運用する形式です。この場合、システムの管理・運用は企業内部で行い、すべてのデータも自社内で管理されます。企業はシステムの購入後、ハードウェアやネットワーク、セキュリティなどの維持管理を自社で行わなくてはいけません。一般的に、この形式ではIT部門がシステムの運用、メンテナンス、バックアップを担当します。
2. 各システム形式の特徴
クラウド形式とオンプレミス形式には、以下の表のようにいくつかの特徴的な違いがあります。システム選定においては、それぞれの特徴を理解することが非常に重要です。
特徴項目 | クラウド形式 | オンプレミス形式 |
---|---|---|
アプリケーションの契約形態 | サブスクリプション | 購入 |
利用料金 | 固定料金または従量料金を月額・年額等で支払う | 初期購入時に所定のライセンス料を支払う |
バージョンアップ | 自動で更新 | 更新されない |
セキュリティ | 提供者が対策 | 利用者が対策 |
データのバックアップ | 提供者が管理 | 利用者が管理 |
カスタマイズ | 限定的に可能 | 広範囲で可能 |
アクセス方法 | インターネット経由でどこからでもアクセス可 | 広範囲からのアクセスには自社環境の設定が必要 |
なお、この内容は標準的な製品を例としています。製品によって異なる場合がありますので、システムを選ぶ際に詳細を確認してください。
クラウド形式の特徴
- 所有権
アプリケーションやシステムの所有権をサービス提供者が持ち、利用者が得るのはそのサービスを利用する権利のみです。 - 利用料金
一定の料金を支払うことでサービスが利用できるサブスクリプション制(月額または年額)です。 - バージョンアップ
システムのアップデートはサービス提供者が行うため、常に最新バージョンを利用できます。 - セキュリティ
セキュリティ対策はクラウドサービス提供者が担当し、利用者は特別な管理を行う必要がありません。 - アクセス方法
インターネットさえあればどこからでもアクセス可能で、特に多国籍企業にとって高い利便性があります。
オンプレミス形式の特徴
- 所有権
アプリケーションは購入した企業が所有し、カスタマイズすることも可能です。 - 利用料金
初期購入時にライセンス料が発生し、その後も維持管理費やメンテナンス費用が必要です。 - バージョンアップ
システムのアップデートは基本的に行われません。製品ベンダに依頼することで定期的なアップデートは可能ですが、別途費用が発生する場合もあります。 - セキュリティ
セキュリティ対策を自社で行い、データは自社内に保管されるためセキュリティに関する責任も負います。
3. 採用すべき条件
どちらの形式が最適かは、IT部門の能力や事業内容などで異なります。特にオンプレミス形式では、システムの管理・運用を自社で行えるIT部門が欠かせません。オンプレミス形式が適している企業の条件は、以下の通りです。
- IT部門が強力な企業
システムの管理・運用が自社の責任となるため、十分なリソースと能力を持つIT部門が必要です。 - 事業内容が特殊な企業
事業特性に応じた業務プロセスに適合するようシステムの高度なカスタマイズが必要な企業には、オンプレミス形式が有利です。
4. 市場の動向
ビジネス環境において、IT技術はますます重要な要素となっています。企業が競争力を維持するためには、最新技術を迅速かつ適正なコストで導入することが必要です。そのため、特に最新技術を迅速に取り入れやすいクラウド形式のシステムは、市場で急速に普及しています。また、クラウド形式は常に最新バージョンのシステムを利用することも可能なため、市場動向としてはもっとも進んだ形式といえるでしょう。
5. 海外拠点で採用すべき形式
海外拠点ではIT部門の能力やリソースが本社に比べて脆弱な場合が多く、現地でのシステム管理が難しいことがあるため、クラウド形式が最適です。クラウド形式ならシステムの管理・運用やセキュリティ管理をサービス提供者が行うので、IT管理の負担も軽減されます。
また、クラウド形式はインターネットを通じて、複数の国からアクセスが可能です。そのため、国を越えた情報共有や業務協力がスムーズに行えるという大きなメリットがあります。物理的な制約を受けることなく、各拠点がインターネットを通じてシステムにアクセスできるので、国際的な情報共有やコラボレーションを容易に行うことが可能です。
結論
業務システムにはクラウド形式とオンプレミス形式の2つがあり、それぞれ特徴とメリットが異なります。どちらを選択するべきなのかは、企業のIT部門の体制や事業内容に依存します。特に海外拠点では、クラウド形式がもっとも適した選択肢となるでしょう。クラウド形式はアクセスの利便性や管理の簡便さから、多国籍企業にとって非常に有効なシステム形式です。