海外拠点におけるシステム導入 ~システム導入の基本~
1. 海外拠点におけるシステム導入の基本
システム導入は企業の成長や効率化を支える重要なプロジェクトです。しかし、特に海外拠点では特有の課題や考慮事項が生じるため、適切な準備と計画が欠かせません。ここでは、システム導入に関する基本的なプロセスを解説し、海外拠点で注意すべきポイントをお伝えします。
2. システム導入の基本プロセス
まずは、国内外の拠点で共通する、システム導入の基本的なプロセスをご説明します。このプロセスは「構想」と「計画」の2つの工程に分けられ、段階ごとに適切な対応が必要です。
2.1 構想の重要性
「構想」では、システム導入の目的や解決すべき課題を明確化し、プロジェクトの方向性を定めます。
- 現状分析
現行の業務プロセスやシステムの問題点を洗い出し、システム導入で解決する課題を特定します。
例:手作業による在庫管理の非効率さ など - 目的設定
導入するシステムによって何を改善し、どのような成果を期待するのかを設定します。
例:在庫管理の自動化による精度向上 など
2.2 計画の重要性
「計画」では、構想で明確にした目的を実現するための、具体的なステップを策定します。
- システム選定
目的達成に最適なシステムを選定します。
例:在庫管理自動化に適したソフトウェアの選定 など - リソースの見積もり
導入に必要な時間やコストを見積もり、適切なリソースを割り当てます。 - スケジュール作成
システム導入に必要なステップとその期限を明確にし、プロジェクトの進捗管理を行います。
3. 海外拠点特有の考慮事項
海外拠点のシステム導入では、国内拠点と異なる課題や制約に直面します。そのため、それらを考慮した構想と計画が不可欠です。以下では、海外拠点特有の条件を踏まえたシステム導入における「構想」と「計画」を具体的に解説します。
3.1 構想の具体化
海外拠点のシステム導入では、構想段階でグループ全体のシステム効率化を念頭に置きつつ、各拠点の特性や要件に応じた柔軟な対応が必要です。ここでは、構想段階で考慮すべき要素についてご説明します。
- 本社主導と現地最適のバランス
システムの標準化によって本社が統一的に管理する一方、現地の特性に適応した柔軟な運用も必要です。どの部分を本社で統制し、どの部分を現地に任せるのかを決めたうえで構想を描けば、グループ全体の効率化が実現できます。 - 業務・組織範囲の検討
現地のシステム導入を対象とした場合は、業務や組織の範囲を慎重に検討しなくてはなりません。例えば、管理部門と製造部門では業務の流れや必要な人員が大きく異なるため、どの組織がシステム導入を主導し、責任を持つのかを明確にすることが重要です。
特に、複数の部門にまたがる場合は、プロジェクトの難易度が大きく変わる可能性があるでしょう。また、導入が広範囲にわたれば各部門間の調整やコミュニケーションが必要になるため、あらかじめ責任の所在を明確にしておくことが成功の鍵になります。 - システム活用の範囲と機能の充足
システムの活用範囲や機能充足についても、構想段階で予測することが重要です。海外拠点で利用できるパッケージシステムは限られているため、どのような製品を導入するか選定が必要になります。グローバル製品を前提とするのか、現地のスタッフを巻き込んでローカル製品を選定するのか。さらには、管理・コントロールの観点から日系製品や日系ベンダーを選ぶべきかなど、明確な方向性を持つことが重要です。方向性が定まっていないと理想的な目的ばかりが先行し、後の計画工程で手戻りが発生する可能性が高まります。
3.2 計画の策定
計画段階では、システム導入を実現するための具体的なステップを組み立てるとともに、海外拠点特有の環境や制約を考慮します。
- 体制の整備
海外拠点では、システム導入に割けるリソースが限られている場合が多いでしょう。そのため、事前に必要な工数を見積もることが重要です。通常業務と並行して導入作業を行うため、実現可能なスケジュールを立てなくてはなりません。 - 労働市場とスキルセット
現地の労働市場や、従業員のスキルセットに合わせた計画が不可欠です。ITリテラシーが低ければシンプルなインターフェースや運用しやすいシステムを選定し、必要に応じて現地スタッフ向けのトレーニングやサポートを整備しましょう。 - コスト管理
システム導入に際しては、通訳費用やトレーニング費用などの予期せぬコストを見積もることが必要です。余裕を持った予算計画を立てることで、想定外の支出にも対応できるようにします。 - スケジュール調整
言語による障壁や習慣の違いから、コミュニケーションの遅延がプロジェクトに影響を与える可能性があります。プロジェクト全体にわたって適切なスケジュール管理を行うと共に、十分な余裕を持たせることが重要です。
結論
海外拠点でのシステム導入では、構想段階と計画段階でそれぞれ慎重な検討が必要です。特に、現地特有の規制やリソースを考慮したシステム構築が求められます。グループ全体の統合と現地ニーズのバランスを取りながら、効率的な情報共有と柔軟なシステム運用を実現することがプロジェクト成功の鍵です。